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HEADS

Tokyo No.1 SOUL SETやZOOT16、猪苗代湖ズとして活動するミュージシャン・渡辺俊美が手がけるブランド「HEADS」。帽子を軸とし、サングラス、アパレル、革小物と、そのラインナップは、彼自身のライフスタイルにも欠かせないアイテムばかり。果たして、彼がこのブランドにかける想いとは……?

今回は、立ち上げのストーリーから個々のアイテムへのこだわり、この先の展望まで、たっぷり話を伺いました。




 ブランドを立ち上げた背景 

「自分の好きなことで、何かの役に立てるとしたら……」

コロナ禍がくれた人生課題



―まずは、ブランド立ち上げのきっかけから聞かせてください。


ずっと音楽をやってきて、そのサイクルの中で生きてきたんだけれど、コロナ禍という、これまで経験したことのない状況に直面して、一旦立ち止まらざるを得なくなってしまったんです。人を集めてライブができなくなってしまって、今後いつ再開できるかもわからない不安の中で、「じゃあ、自分には何ができるだろう」と考えたのがきっかけですね。


―そこで、「帽子だ」と思ったんですね。


そうですね。

やっぱり、自分が好きなこと、一番興味があることで何かやってみようと。

元々、若い頃は雑貨屋で働いていたんです。当時のラフォーレ原宿の中にあった、帽子やメガネを扱うお店でした。その頃好きだったものは今でもずっと変わらない。これなら、やっていけるんじゃないかと。


―音楽とはまた違う、“自分の好きなこと”で何かを始めようと?


はい。もちろん、音楽はこれからもずっとやって行くし、それができる環境はとても大切。

でも、昔から好きな言葉があってね、陶芸家で人間国宝でもあった河合寛次郎さんの

「新しい自分が見たいのだ

−仕事する」

という言葉。音楽に軸足をおきながらも、ブランドを始めることで、新しい自分を見つけられるんじゃないかと、そんな思いもありましたね。そして、その自分が好きなものたちが、誰かのおしゃれを特別なものにしたり、身につけるだけでワクワクできたり、そんな風に役に立てたらいいな……と。


―好きなこととはいえ、踏み出すには勇気もいったのではないでしょうか?


僕、音楽も服飾も、学校に通って専門的な知識を学んだことはなくて、そこにコンプレックスがあるんだけれど、それとは真逆に、根拠のない自信もあるんです。それは、幼い頃に打ち込んでいた剣道にしろ、進学にしろ、自分の「こうなりたい」は叶えてきて、それを褒めてくれる家族がいたから。だから、東京に出てきてからも、自分の興味があることに対しては、どこかに「絶対に行ける」と言う確信がある。音楽活動をずっと支えてくれている事務所の社長が背中を押してくれたことも大きかったですね。



 コンセプト、ビジュアル、素材、アパレル… 

「HEADS」では

“ミュージシャン・渡辺俊美”

のパブリックイメージに囚われない表現を



―ブランドを立ち上げる上で、最初からコンセプトは固まっていたのでしょうか?


意外と決まったコンセプトはないんです。これは、音楽、洋服と、これまでの人生で辿ってきたキャリアの中でも言えることなんだけれど、最初にコンセプトや目標を固めてしまうよりも、積み重ねていく中で徐々に形になっていく方が自分らしいのかもしれないですね。「HEADS」はまだ始まったばかりだから、今は僕のパブリックイメージが強いと思うんです。コレクションを積んで、いろんな人とコラボレートしていく中で、「HEADS」としてのイメージが形成できたら良いですね。



―シンプルながらストレートに訴えかけるブランドロゴも印象的です。


タイポグラフィーがすごく好きなので、それをアレンジしたいとデザイナーさんに相談しました。「HEADS」の“A”を逆にしたいという点だけは、最初からイメージにあったんです。自分の中のアナーキーな部分を逆さにしたいというか……。

あとは、昔からトーキング・ヘッズやデヴィッド・バーンが好きで、映画「ストップ・メイキング・センス」のような、音楽とアートを混ぜたステージングが好み。初期のトーキング・ヘッズの映画のロゴもAが逆だったので、そこからもインスピレーションを得ました。


―シーズンごとのビジュアル撮影はどんな風にイメージを形成していますか?


あくまでユニセックスな世界観にしたいので、男性ではなく女性モデルを起用しています。あえて目が隠れるようなアングルのカットもあるのですが、それも中性的なイメージ作りの一つですね。衣装は、帽子の世界観を表現するための道具。核となるのは常に帽子で、そのシーズンのテーマや、帽子で表現したいことを最大限に活かすものを考えます。22awの撮影では、それがドットの衣装でした。


―帽子は、素材にもこだわっていると伺いました。


はい。例えばベレー帽なら、フェルトではなくウールニットを使うことで上質感のある仕上がりに、キャペリンは太さ5mm以下のモットル麦を使用することで、品のある艶やかさを出しています。素材はとても大事ですね。

今後は、再利用生地や倉庫に眠っている残反などにも目を向けていこうと構想中です。


―アパレルやサングラスなど、帽子以外のアイテムは、ブランドにとってどんな立ち位置ですか?


自分が好きで身につけるものに関しては、作っていきたいと思っているんです。

メガネは僕にとっても欠かせないものだし、普遍的だけれど、素材がどんどん進化していて、実際手掛けてみるとかなり奥深い。

アパレルは、デザインももちろん大事なんだけれど、やっぱり素材なんですよね。いかに良い素材に出会えるかが勝負。形は自分で想像できるんだけれど、素材は自分の想像では限界があるんです。だから、コートとセットアップは形を変えずに、いい生地に出会ったら、それを毎シーズン作って行きたいと思っています。

革小物も、良い職人さんに出会ったらコラボレートしていきたいです。



 これからについて 

帽子がくれる“ときめき”や“ワクワク”を

たくさんの人にシェアしたい



―4月下旬からは2022AWの展示会も控えているそうですが、今回のテーマ「Neo-Classic」について聞かせてください。


これまであった古典的なものを再構築していく、という意味で掲げました。

例えば、カンカン帽は男性用の帽子としてのルーツがあるけれど、女性が被ることでまた新鮮に映ると思うんです。ベレー帽だったら、日本人は、例えば手塚治虫さんとか、絵描きさんが被っていた印象が強いかもしれないけれど、僕の中では、1950年代のビートニク世代のイメージ。女性がボーダーを着て、ベレー帽を被って、サングラスをして、ジャズを聴きながらジャック・ケルアックの小説を読む……。そんなミクスチャー的な要素を表現できたらと思って名付けました。


―今回は東京・名古屋・大阪と3都市を巡るそうですが、どんな期待を抱いていますか?


一人でも多くの方に「HEADS」の作品に触れてもらいたいと思っています。

前回の展示会でもそうだったのですが、できるだけ現場に立って、来てくれた方たちとコミュニケーションをとるようにしているんですね。そうすると、「あ、こういう雰囲気の人にも似合うんだ」とか、「こんな風に被ってもいけるな」とか、たくさん学びがある。今回も、多くの気づきが得られることを楽しみにしています。


 

《展示日程》

HEADS

2022 Autumn & Winter Exhibition

“Neo Classic”


★TOKYO

4月27日(水)〜30日(土)

@kit gallery(渋谷区神宮前2-31-3 2F-A)

*27,28日 13:00〜19:00

*29,30日 12:00〜18:00


★NAGOYA

5月6日(金)〜7日(土)

@The Sessions(名古屋市中区大須3-36-48)      

11:00〜19:00


★OSAKA

5月10日(火)〜11日(水)

@中央帽子SHOWROOM(大阪市東成区東中本2-16-28)

12:00〜17:00

 


―Charさんとのコラボレートも予定しているとのことで、楽しみです。


“音楽と帽子”の元祖のような人ですからね。

Charさんにとっての原点は、クラプトンなんだそうです。まだバンド「クリーム」の時代に被っていて、それに憧れたと話してくれました。

僕にとっては、Charさんや沢田研二さんが原点。高校時代のライブの写真を見ても、その頃からハットを被っているんです。地元(福島)では、そんな時くらいしか帽子被れなかったってのもあるけどね(笑)。


―この先、お店なんかも考えていたりしますか?


いつかは作りたいですね。ベレー帽専門店にしたいんです。

子供から大人まで、どんな世代の人でも通えるようなお店が理想です。

イメージは和菓子店。選んだ帽子を包んでいる間にお茶をお出しして、ゆっくり待っていてもらえるようなお店が理想です。日本のいいところと西洋の文化をミックスした雰囲気にしたいですね。


―最後に、俊美さんが「HEADS」を通して伝えていきたいことを聞かせていただけますか?


「いつ何時でもときめきがある、そんなロマンチックな生き方をしませんか?」

それが最大のメッセージです。

ときめきやワクワクがなくなったら、寂しいですよね?

「HEADS」では、決してタウンユースではないデザインも提案しています。

それは、“特別”を楽しんで欲しいから。「ちょっと派手かな?」と思っても、ときには街中の視線を集めるようなおしゃれにチャレンジすることも大事。見られることで自分も成長するし、それがおしゃれの醍醐味だと思うんですよね。

僕、帽子を被ってお出かけしているおじいちゃんやおばあちゃんを見ると嬉しくなるんです。そんな風に、いくつになってもおしゃれを楽しんでいきたいですね。





Photo_ Kazuki Miyame

Text_ Shoko Sakamoto




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